山田太一の新作ドラマ「キルトの家」(前編)を観賞

山田太一脚本によるドラマ「キルトの家」の前編が昨夜、NHKテレビで放送された。山田太一氏の新作ドラマは久しぶりだ。

前後編2回のドラマなので連続ドラマとはいえないが、単発ドラマともちがう。連続ドラマとしてはフジで放送された「ありふれた奇跡」(仲間由紀恵、加瀬亮主演)以来だろうか。山田氏も70代後半、これから発表される新作はもうそんなにたくさんではないだろうが、1作1作が見逃せない。

今回の「キルトの家」は東京の池上駅に若い男女、南(みんなみ)空(三浦貴大)と南レモン(杏)がやってくるところから始まる。駅の改札を出たところで、空は男性から小突かれ、倒れてしまう。空が背負っていた荷物が男性に当たったのに謝らなかったせいだった。この出だしのエピソードだけで、山田太一の世界だと感じる。強さと常識を備えているレモンに対して、なにか自信がなくおどおどしている空。どうもこの男女には何か訳がありそうだと感じさせる。
2人は、1年後に取り壊しが決まっている古い団地に取り壊しまでの短期入所というかたちで入居する。その団地の広場で数人の老人たちに出会う。
翌日、団地内の公園で体操をしていた空を一人の男が指差しながら近づいてくる。男は橋場勝也(山崎努)と名乗り、ドリンク剤を渡したあと、空をある家に連れていく。そこがキルトの家で、家主夫婦がともに入院していて、掃除と手入れをしてくれれば自由に使っていいということで、橋場や老人たちの憩いの場となっている。昨夜の前編では、空が、兄の1ヶ月間の海外出張中に兄嫁のレモンと親しくなり、2人で郷里を飛び出してきたことがわかる。

昨日の前編は登場人物たちの紹介が中心だったので、ドラマが動くのは来週の後編だと思うが、随所に山田太一らしさが溢れていた。自分らしく生きるということ、世間とうまく折り合いをつけて生きるのと、衝突しても自分の信念を貫く生き方とどちらの生き方をすべきなのか、人と人との関係、付き合い方、生きるということは何なのか、誇りというものの大切さ、生きるということと働くことの関係など、今まで山田太一氏が自身のドラマで追求し続けてきたテーマばかりだ。簡単に答えがでるテーマはない。しかし、そうした人生の重大事を考えずに日々を送っていることが多いなかで、こうしたドラマを観ていろいろ考えるというのも意味があるように思う。

空役の三浦貴大が「カレ、夫、男友達」に続いてなかなかいい演技を見せている。無骨で不器用な青年を的確に表現している。杏は芯の強い女性という感じは伝わるが、訳ありの女性という感じはちょっと表せていない気がする。山崎努は圧倒的な存在感である。彼にとっても久しぶりの山田作品であり、思いがこもっているのだろう。松坂慶子はうまいんだか下手なんだかよくわからない。老人役で、佐々木すみ江、織本順吉、正司歌江、緑魔子(なつかしい!むかし、「やさしいにっぽん人」を観た)、北村総一朗、上田耕一が出演し、それぞれ人生の年輪を刻んだ人物の雰囲気を見事に演じている。ほかにも根岸季衣、余貴美子なども出演している。
来週の後編を観たらもう一度書こうと思う。

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